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2014年9月28日日曜日

CAN-DOリストに関連したCLIL評価の提案

国際教育研究所月例研究会で『CAN-DOリストに関連したCLIL評価の提案』というタイトルで発表させていただきました。この研究会ではCLILに関してたいへんお世話になっている。ありがたいことです。この研究所は、羽鳥博愛先生が中心となって日本の英語教育を支えてきた重要な研究所です。羽鳥先生にお会いできて、写真のとおり、楽しくおしゃべりできました。まだまだご健在で東京オリンピックの話やリニア鉄道の話など実に元気で見習う点がありました。私がまだ高校教師の駆け出しの頃に、羽鳥先生の著書や講演を聞いて、ずいぶんと勉強させていただきました。羽鳥先生のいつまでも変わらない柔軟な考え方と前向きな真摯な姿勢に感銘を受けました。


羽鳥先生、山岸先生のおかげで、この研究所の会でCLILを取りあげていただき、CLILはますます広がりを見せています。ほんとうにありがたいことです。しかし、それとともに、課題も明確になってきました。その一つが本日話題とした評価の問題です。

私は、CAN-DOリストには、CEFR研究の関連からずっと興味を持っています。また、自分でも実践し、使用しています。CLILというのは、CEFRとは密接に関係しているわけですが、決して同じフレームワークの概念ではありません。しかし、現実問題として、CEFRを利用した評価とCLIL実践はヨーロッパでは車の両輪のように動いています。その話を、dynamic assessmentと関連させて話をしました。参加者の方と忌憚のないやりとりができてたいへん勉強になりました。発表スライドは本ブログからダウンロード可能です。

一つ本日の話の中で、多くの人に考えていただきたいことがありますので補足します。それは、評価に対する考え方です。

評価 = テスト

という考え方です。これは意外に根強いように思います。「科学的に評価する」あるいは「客観的に評価する」「正確に評価する」などなど。

評定は学校や授業のシステム上しなければいけません(それも本当に必要かどうか?)が、私たち教師は本当に「正しく」対象生徒の学力を評定できるでしょうか?

評定するにはテストが必要です。そこで、あるテストを作成して、テストをするとします。しかし、そのテストは、学んだ知識や技能が定着しているかどうかを測定することを目的としている場合がふつうです。しかし、それはCAN-DOの本質とは違うと考えています。
テストは、あくまで結果を見るということで、点を測定します。測定したい知識や技能の一部を測定し、可能なかぎりそれに近い部分を判断しようとしているとは言えますが、それ以上は言えないでしょう。

また、その測定は何のためにしているのか?という問題があります。これは表向きには「形成的評価」「総括的評価」などという名目で学習者に提供しているかもしれませんが、目標を決めて、その指導をして、それがどのくらい達成したのかという結果という点の評価です。その点を測定することを目的として評価することが、「形成的評価」「総括的評価」につながるということでしょう。

しかし、それは教師として本当に学習者に提供したいことでしょうか?

TOEFLやIELTSなどの英語テストは、ある程度綿密にその受検者の英語力を推定しています。しかし、その結果は必ずしも対象となる人の「コミュニケーション能力」の全体を判断しているとは言えません。ある前提のもとに推定してスコアやレベルを出しています。それはそれで価値がありますが、その場合の教師の役割は別にあります。その一つが、そのスコアやレベルをもとに、質的なサポートをすることです。

CLILは、そのような言語力を内容や状況と併せた統合学習を評価すること求められています。ということは、「複雑でむずかしそうだ」と考えがちです。それは無理だからやめようとなるかもしれません。それはひょっとすると思い込みかもしれません。

本題のCLILにおけるCAN-DOの利用を考えてみましょう。

CLILの評価を考えた場合、CAN-DOはある面で有効だと思います。問題は、CAN-DOの本質を理解しているかどうかです。単に「〜ができる」かどうかではあまり意味がありません。CAN-DOの本質は、ふりかえりであり、self-assessmentです。自律学習の育成です。そのためには、学習プロセスをassessするということが重要です。CAN-DOはこのassessに有効だと思います。そこで、CLILのCAN-DOは「何を」が工夫のポイントとなります。

さらに、その「何を」に関連して、授業活動の中でのやりとり、教師とのやりとり、学習者同士のやりとりの中で、assessすることを一義的に考えることが大切です。つまり、ここで、dynamic assessmentの観点を取り入れます。dynamic assessmentは言語テストには馴染まないかもしれません。より教育的です。つまり、指導しながら評価し、評価しながら指導する、あるいは、学びながら評価を加え、評価を考えながら学ぶ、いわば指導的な評価だと思います。学習者の点を見ることではなく、学習者の線あるいは面を見るということです。それも、不確定な「未来」を見ながら評価するということです。

CLILの評価を具体的に考える場合、dynamic assessmentが基盤にあって、従来の評価、科目内容の知識などの評価と言語(英語)の知識と技能の評価をします。私は、CLILにおいて学習者を評価する場合、いままでと変わらない評価のあり方でかまわないと思っています。特に新しい評価を開発する必要もないし、複雑と考える必要もないでしょう。しかし、大切なことは従来の評価の根本に、教育としての評価、dynamic assessmentの観点を置くことが重要と考えます。理由は、CLILの基盤が社会構成主義の考えにあるからです。これがいままでのcontent-based instructionと多少違う点と考えられます。評価もそうあるべきでしょう。

発表では、私自身がまだ今一歩明確ではないために、提案という形になりました。しかし、参加者の方からご意見をいただき、さらに、その後の会で様々な話ができて、かなり満足度の高い集まりでした。

いつもながら乱筆乱文にて失礼します。



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