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Current Practices and Future Perspectives of Content and Language Integrated Learning (CLIL) in Japan

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2014年4月24日木曜日

ドイツの「アートを英語で学ぶ」

2月の終わりから3月にかけてドイツとオランダのCLILとIBの現状を見て来た。一つだけ、ここで報告しておこう。

ドイツのオルデンブルク(Oldenburg)で参観したLearning English through the Arts(LETTA)というセミナーのことだ。

LETTA

内容は、「アートという科目を通じて英語を学ぶ」ということを、養成課程で学ぶ学生が集まって考えるセミナーだ。ドイツ、ポーランド、リトアニア、トルコからの学生が60人ほど集まって英語でやり取りをしながら、それぞれの国の教育環境や状況を理解しながら、「どう教えるか」(didactics)を実践的に考える2週間のセミナーだ。

背景には、アートの授業が英語で行われているという実態がヨーロッパであるということだ。つまり、アートのCLILだ。絵を描く、何かを作る、音楽や踊りをする、などなど、よく考えてみると、確かに、CLILの要素を多く含む活動が自然にできる。英語を使ったとしても、実体や行動として示すので、ことばが理解しやすい。

集まった学生たちは、英語の教師になるという人とは限らないようだ。将来は様々であるが、このセミナーに関心を示して集まった。基本は小学生や中学生にアートをどう教えるかというコンセプトだが、ただ講義を聞くというよりも、ワークショップや発表を重視し、まさに、このセミナー自体がCLILとなっている。

さらに、おもしろいことに、集まっている人全員が英語を母語とした人ではない点だ。バイリンガルやトライリンガルの人はいるかもしれないが、英語は母語ではない。しかし、焦点は、英語という言語ではない。あくまで、アートである。主催はオルデンブルク大学の先生たちであるが、エラスムスというEUの基金で運営されている。

私は、最初の3日間だけ出席しただけであるが、参加者は、それぞれの国の人といっしょにCLILを考えるという文化交流を楽しんでいるようだった。もちろん、ドイツ以外の国の人はドイツを知るという意味で有意義だし、ドイツのオルデンブルクの学生は、トルコ、リトアニア、ポーランドなどの学生から刺激を受ける。単に、学生が集まり、英語のトレーニングや英語教育を学ぶよりは、このほうがおもしろいと感じた。

日本でこのようなセミナーを、中国や韓国の学生や先生同士でやってはどうかとセミナー中に考えた。英語を教えることだけで集まるのではなく、やはりCLIL的な内容を研修するのである。しかし、スポンサーはいないからおそらく無理だろうと思った。ヨーロッパは懐が深い。

オルデンブルク大学のゲーリング教授が音頭をとってこのセミナーを主催している。かなりの労力だろう。他の大学の先生も引率として参加している。2週間はたいへんだ。しかし、学生にとっては貴重な催しである。CLILに期待するものが大きいのだろう。

ドイツのCLILは、教師は2科目を教えるという背景に支えられている。また、ドイツ語やドイツ文化を大事にするという姿勢もしっかりとしている。私は、このセミナーで、日本はこれに学ぶべきと考えた。つまり、バイリンガルだ。もちろん、ドイツ語は英語に近い言語であり文化的にも近い。それに比べると日本語は言語も文化も遠い。それはそれとして受け入れて、英語のCLILを日本語を大切にしながら学ぶという方向で考える。英語だけで教えるとか考えずに、CLILを考える。アートならば様々な活動が工夫できそうだ。