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CLIL SAITAMA(旧名称)

Current Practices and Future Perspectives of Content and Language Integrated Learning (CLIL) in Japan

CLILは、次第に注目を集めています。本サイトは、笹島茂がかかわるCLILの実践やつぶやきを集めたものです。参考にしてください。

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2013年7月19日金曜日

三重大学FDセミナー

三重大学国際交流センターおよび高等教育創造開発センター主催のFDセミナーに招かれて参加した。私の話の資料は、本ブログから興味ある方はダウンロードしていただきたい。

私の話というよりは、後半に行われた3つの模擬授業がとても中身があり、興味深く拝見させていただいた。多くの大学は、グローバル人材の育成ということもあり、「英語で授業をする」という課題に直面しているようだ。その課題の一環としてCLILに興味を持っていただき、実践しようとされている。

それぞれの専門の先生方の努力が肌で伝わる内容でとても勉強になった。ここではそのことについて書かせてもらう。

英語を使って仕事をしている人はたくさんいる。専門の先生方も英語はある意味で必須なのだと改めて感じた。実は、これが最も大切だと思った。それぞれの分野で英語は必要であり、それは、私のように高校教育の中で英語を教えていた人間とはちょっと違うスタンスだということを強く感じた。それとともに、専門の分野で英語を使っている人が、学生に授業として展開することの難しさも感じた。CLILはそれを補ってくれる学習のはずだが、いかんせん日本という状況の中でどうするかがいまだに課題だ。模擬授業はおおいにそのヒントを与えてくれた。

まず、一つ目の模擬授業は、医学部の内容である。私は、模擬授業を見ながら、この内容は学生は食いつくと思った。多少むずかしそうな語彙が使われているが、たぶん医学生にとってはたいへん興味深い内容で、おそらく疑問も持つ。そこで、ポイントはどう授業の中で学生が英語で活動するかにある。CLILの原形を見たような気がする。いまの学生は、単に講義を聞いただけではおそらく満足しない。私だったらどうするかを考えた。たぶん、私だったら、もちろん私は医者ではないのでほとんど内容は分からない。しかし、それを基盤として、学生に私に説明させるようなタスクにするだろうと考えた。そのためには、thromobosisについて彼らは自分で資料を調べ、考えるはずである。可能であれば、その話題でdiscussionもできるだろう。さらには、ポスターやパンフレットも作成できる。ブログも可能だ。学生が疑問を持てば、自分で解決する。教師の役割は、英語という言語に関するサポートと調べるためのアドバイスである。

医学の知識を持っている教師のアプローチは違うのではないだろうか。おそらく内容に関するやりとりが英語でできるはずだ。先生が質問を出す。それに学生が答える。それだけはなく、学生に質問させて、先生が答えるという活動も可能である。専門の資料を用意し、それに補足することも可能であろう。その際には、発音や文法などを気にするのではなく、意味に集中することだと思う。学生は最初はなかなか英語を話せないかもしれないが、「英語を使って」専門の内容を英語で考える場を与えれば、次第に英語を使うようになるのではないか?このような模擬授業を少しずつ展開すれば、学生はきっと満足するはずである。その意味から、英語の教員と専門の教員が連携することは必要かもしれない。

次は、工学系の模擬授業だった。Digital Image Processingの導入である。これも工学系の学生にとってはほぼ分かるだろうと思ったし、率直におもしろいと思った。医学関連の模擬授業とほぼ同様の印象を持ったが、とにかくスライドが工夫されていておもしろい。英語であろうが日本語であろうが学生の興味関心は変わらないように思う。問題は、それが成績や評価につながるという際に、英語が苦手な学生は英語に対するアレルギーを持つ可能性があるかもしれないということだ。

フィンランドで、英語が苦手な工学系学生の英語補習授業を見たことがある。さすがフィンランドの教育だと思った。3〜4人の学生相手に英語の先生が、工学系の内容を話題に英語で授業をしていた。ときどきフィンランド語を入れながらであるが、学生は熱心に英語力をあげようと参加していたのが印象的であった。問題は、やはりニーズだ。英語ができないと彼らは仕事がないから必死である。

CLILはその環境を学生に与えるアプローチだと考えている。模擬授業にはその可能性を感じた。無理して英語ばかりにこだわる必要がなく、工学系では英語は必須で、かつ、そのほうが分かりやすい。ポイントは、工学の技術をコミュニケーションするのに英語のほうが役に立つということを、学生に分かってもらうことだろう。模擬授業はそれを十分に伝える内容だったように思う。

さいごは、言語学を英語で教えるという、私の仕事にも共通する課題である。実はこれが最もむずかしいと勝手に考えていた。言語について英語で教えると言った場合、言語学を勉強している学生を対象とするので、ある程度動機付けがなされていると考える。そこで英語で教えるということはごく当たり前で自然であるが、そこでコミュニケーションを図るためにはどうするかである。日本語と英語の違い、言語の働き、人の認知と言語などなど、おそらく興味を持っている人には興味深い内容となるが、医学や工学のような展開とは違う展開を考えなければいけないだろう。言語学を話題としてどう学習者同士がコミュニケーションを図るか?その話題とコミュニケーションが別の社会的な場面でどう応用できるのか?おそらくそのあたりに言語学をCLILで行うカギがあるのではないかと考えた。「言語を意識する」という活動は重要だと思う。英語でも日本語でも言語に関する意識をしっかりと持てるようにすれば、学習者は自律してことばを学ぶのでないだろうか?何にでも応用可能であろう。

しかし、現時点で私にはこれに対する明確なCLILのイメージができない。言語学の内容と英語を統合する意味がうまく見いだせないからだ。「英語で授業をする」場合にも、文法などは母語で教えることが多い。その方が効率がよいからだ。それでも、この授業は私にとって刺激的でたいへんおもしろかった。

というわけで、まとまりませんが、三重大学でのFDセミナーに講師として参加する機会があり、私のCLIL実践にとってはたいへん有意義な一日でした。どこかで招かれれば、私はどこにでも行きます。

乱筆乱文失礼(あとでまた加筆します)。