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Current Practices and Future Perspectives of Content and Language Integrated Learning (CLIL) in Japan

CLILは、次第に注目を集めています。本サイトは、笹島茂がかかわるCLILの実践やつぶやきを集めたものです。参考にしてください。

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2013年1月21日月曜日

CLILの事例3(イタリア)


確かなことはわかりませんが、イタリアの英語教育自体あまり注目されることはないようです。ヨーロッパ全体からすればイタリア人は相対的に英語は得意ではないし、フランス人同様自分たちのことばに誇りを持ち、相手がイタリア語を話すことを望んでいるようです。実際、個人的な経験では、たしかに英語を話す人はそれほど多くないように思います。また、小学校から英語は教えられていますが、学校での英語授業も必ずしもコミュニケーション重視の指導ではなく、文法などを中心とした英語指導も多いようですが、日本と比べると、英語はやはり実践的に教えられる傾向にあります。

CLILに限らず、普通の英語の授業も見てきましたが、英語で授業をする(英語で授業をすればいいという訳ではありませんが)教師は、中等教育には多いと思います。生徒もそれほど英語が話せる訳ではないようですが、意識を持っている生徒はかなり話せるようになっています。私が出会った生徒は様々でした。

CLILに関しては、早期の段階で取り入れている国が多いにもかかわらず、イタリアでは政策的にはそのようにはなっていません。CEFRは徐々に浸透し、ELPも取り入れられていますが、小学校では一部の学校や教師によってCLILは推進されていますが、多くの小学校ではそうはなっていません。小学校の先生に英語の研修を実施したりしていますが、私が見た小学校の先生を対象とする英語研修の様子を見ると、日本の小学校の外国語活動の導入の頃と似たり寄ったりで、たいへんそうでした。実際に小学校の英語は、ある程度英語ができる人によって教えられているようです。CLILが小学校などで普及していない理由はその点にもあるように思います。

私がイタリアを訪れ、学校をはじめて訪問したのは2009年でミラノの学校です。インターナショナルスクール、普通の高校、中学校、小学校で授業を見ました。その後、何度か訪れるようになって、授業をいくつか見ましたが、実は、CLILという授業はそれほどたくさん見ている訳ではありません。CLILはごく一部の熱心な先生たちによって、プロジェクトとして五月雨式に行われていました。CLILに取り組んでいる教師の人たちと会い、実践の様子や教材などを見せてもらいました。また、CLILではない授業であっても、CLILのことを知っていて、CLIL的なアプローチをしている教師の授業も見せてもらいました。シェイクスピアのリア王の題材を映画を使って教えていました。職業高校の高学年の授業でしたが、生徒の英語力も高く、面白い内容でした。その学校では、同僚の数学の先生がCLILの授業をしていましたが、プロジェクトが終わり、授業は中断していたようです。授業参観はできませんでした。学校としてCLILを取り組むというよりは、個々の関心のある教師がCLILを断片的に取り入れて実施しているというのが現状のようです。

『CLILー新しい発想の授業』の中で扱った学校や先生のことは、ここでは触れないことにしますが、そこでも述べたようにミラノでは、Gisella Langeという人が推進役です。しかし、残念なことに、スペインなどと違い、政策的なサポートが当時はなかったようです。最近になり政策的に後押しがあり、2013年度より、イタリア全体で、高校や職業学校でCLILを実施するとなったようです。正確には理解していませんが、高校の少なくとも1科目は外国語で教えるということがカリキュラムで規定されたようです。どの程度、また、どのように実施されるかは、ご存知の方がいれば教えていただきたいと思っています。

おそらく英語などを中心とした外国語が大学や仕事で必要になっている実態に追随することが社会的に要求され、他のヨーロッパ諸国でのCEFR, ELP, CLILなどの言語教育の実践に刺激され、ようやくスタートしたと言ってよいでしょう。数年前から、そのような動きがあることを聞いていました。今後が楽しみです。しかし、実態として、教員養成や教員研修で科目の教師の外国語(英語)力を高める必要があります。その素地がイタリアでは欠けているので、そう簡単には進まないと思います。現状では、教育政策も教員研修も決して望ましい状況ではなく、英語教育も教員養成も研修もそれほど充実しているわけではないようです。都市部では移民の子供も多く、決してよい教育環境で授業が行われているわけではありません。学校や先生による指導方法にも格差があります。

あるごく普通の小学校と中学校を訪れたことがあります。たいへんよい学校で、英語授業などを参観させてもらいました。また、そこの英語の先生たちとも話すことができました。しかし、小学校や中学校の多くの先生たちは英語があまりできませんでした。当然、生徒もそれほどできませんが、中学校の高学年になれば、けっこうできます。日本ととても似ていますが、中学校ではフランス語も教えられていて、フランスからの言語アシスタントの人がそのときにはいました。フランス語の先生が熱心でフランス語学習のプロジェクトを推進していて、遠足などもフランスに行くようです。考えてみれば、イタリア語とフランス語はラテン系のことばでそれほど難しくないのでしょう。しかし、この学校ではCLILはやっていません。小学校では英語だけで、教科書にそって英語は教えられていました。先生も英語だけで授業をしているわけではありません。

私が訪問した学校は、ミラノとローマだけなので、実態はよく分かりません。しかし、どちらの学校にも、イタリア語を母語としない生徒は多く、文化的にも学校教育がむずかしい面もあるようです。このような状況は、他の多くのヨーロッパの都市と似ていますが、やはりイタリアの文化と伝統は強いものがあります。その点を反映して、イタリア型のCLILは進んでいます。

日本は、イタリアの言語教育状況に似ている面があります。たとえば、クラスが固定化していて、教科の先生が教室に足を運び、教えることが多いようです。そのために、プロジェクターなどの設備がそれほど整備されていないことが多く、スマートボードなどが頻繁に使える教室環境にないようです。また、生徒はそれほど英語や外国語を話す必要性を感じていないことが多く、教師も英語を指導される環境になかった訳です。それでも、2013年度からCLILの導入を決定したということは、日本で言えば、Super Science High Schoolなどの構想と似ているかもしれません。英語は、イタリアの子供たちにとっても必要な言語となっています。大学まで進んだり、仕事をする場合にも、英語は、いや英語だけではなく、その他の言語も重要になっています。その点に注目して、CLILを高校でスタートすることは、おもしろい展開があると考えられます。

私は、日本でも同様の発想で、CLILを取り入れてみてはどうかと考えています。というのは、小学校での外国語活動には、様々に批判があり、ヨーロッパのスペインなどのようにCLILを導入することは、むずかしいと思います。クラスサイズや教員研修でも限界があり、教師の仕事量からもむずかしい可能性があると思っています。現在の「外国語活動」の中でCLIL的なことを取り入れる程度で現状ではよいのではないかと思っています。

それを受けて、中学校でも、CLIL的な英語授業をすることを提案したいと思っています。しかし、あくまでも、ここでは英語の基礎を指導することが大切です。ポイントは、科目内容と少しずつ擦り合せることです。英語の中で音楽的な内容を取り上げていれば、音楽の教科とのコラボを考え、そこで英語がどう使われているのかを、学習者自身に考えさせることが大切だと思っています。教師はそれをサポートするようにして、授業では間接的にアプローチする。そのように考えれば、それほどカリキュラムを圧迫することはないのではないかと考えています。

高校は、CLILが可能です。英語力がある程度身に付いている生徒、たとえば、CEFRでB1程度になっている生徒には、CLILは動機付けになり、大学教育との連携にも効果的です。また、職業(専門)高校などでのアプローチは、CLILは最適です。科目内容を教えている先生とのティームティーチングあるいは科目内容の先生の英語力に応じて、CLIL教員研修を実施し、英語で科目を教えるようにする。

ここでのポイントは、科目内容を教える教師(英語教師も)の教え方に関する考え方を変えることです。英語ができるからと言って英語で教えられるという訳ではありません。CLIL のポイントはそこにあります。





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